意外に知られていない職場のメンタルヘルス問題!”うつ”について!

会社で働くうつで苦しむ女性

高の組織力を引き出す!
ンタルトレーナーの森川祐子です。

 

先日、ある介護施設にてメンタルヘルス研修を行ってきました。
午前に一般スタッフ様対象で、午後からは管理職者様向けで行いました。皆様、真剣に取り組んでくださって、ワークも非常に盛り上がりましたよ。人事労務関係者や、研修講師にとっては聞き馴染みのある話でも、現場の方にとっては新鮮な内容でもあるようです。

 

1、意外に認識されていないメンタルヘルス不調”うつ”について

 

はたらく人に一番多いメンタルヘルス不調といえば、”うつ”です。”うつ”という言葉は知っていても、気分がふさぎこんだりするのよね、といった認識の人が多いのですが、実はさまざまな症状が現れます。なかには”うつ”だとはわからないような症状も。

 

今回は”うつ”がどういう症状で、実際に罹ってしまったら、どう対処したらよいか等お伝えしたいと思います。

 

1-1、身体的症状について

身体的症状としては、いつも疲れている、肩こりや背中の痛みがとれない、息苦しいさ等、何となく調子が悪い状態が続きます。メンタルヘルス不調に出やすいのは、自律神経の働きが悪くなるため、代表的なものに胃腸の不快感があります。胃の痛みや胃もたれ、便秘や下痢を繰り返す。頭痛頭重感というのも、うつによく見られる症状です。

 

そのほか、口が渇く、胸が苦しい、めまい、耳鳴り、食欲がなくなるため、体重減少も見られます。これだけを見ると、「ちょっと疲れているのかな」程度にしか捉えられないことが多いものです。

 

1-2、眠れない

必ずといっていいほど見られる症状が「よく眠れない」というものです。寝つきが悪いに始まり、夜中に目が冷めたり、身体は疲れているのに朝早く目が覚めてしまうといった感じです。長時間寝たはずなのに、疲れがとれていない、熟眠障害といわれるものもあります。

 

下手をすれば、眠れずに朝を迎えてしまう。その気分の悪さたるや想像できますか?眠りたいのに眠れない・・・身体は重たく感じられ、仕事に行かなければならない、となるとかなり辛いことでしょう。なので”うつ”の方の特徴として、朝は調子が悪く、午後になってようやく調子が戻ってくる人が少なくありません。こういう状態を日内変動(にちないへんどう)と言います。

 

1-3、心理的症状

気分が憂うつで、ちょっとしたことで落ち込んでしまう、不安が強くなるという症状があることは知っている人も多いことでしょう。しかしながら、実際にこのような状態になると本当につらいです。落ち込みや不安感が強くてよく眠れなくなることも少なくありません。寝る時になっていろんな心配事が思い出されて、頭のなかでぐるぐる回る、これを”ぐるぐる思考”と言いますが、考え事をして、眠ったのか夢の続きなのかよくわからないような状態になり、睡眠の質を下げてしまいます。

 

また”うつ”は落ち込みばかりではありません。

 

ちょっとしたことでキレやすくなったり、いつもイライラしていたり、周囲の人たちとのトラブルが増えるケースがあります。イライラしていたかと思えば、どーんと落ち込んで人と話すのが億劫に感じられ、人と話さなくなったり、そうなると表情に活気がなくなり、あきらかに”いつもと違う”様子になるのです。

 

集中力が低下し、仕事における判断や決断ができなくなります。仕事って常に判断の連続ですから、仕事がうまくいかなくなります。「ちゃんとやらなければ」と気持ちばかりが焦ってしまい、ますます自責の念にとらわれてしまいます。

 

これまで好きだったこと、趣味などにも興味が持てず、読書や新聞を読むということもままならなくなります。本来は心地の良いはずの入浴やシャワーもめんどうくさくなり、身だしなみにも関心がなくなり、見た目の様子からもその変化に気づくことができるはずです。

 

 

2、最悪の場合・・・

怖いのは、”うつ”という病気は重症化すると、自殺というリスクがあることです。”うつ”の人の自殺率は15%〜25%とされており、これはかなり高い確率だと言えます。WHO(世界保健機構)の統計によると、世界中の自殺者のうち”うつ”のような気分障害に患っていた人は30%に上ります。日本でも自殺者の約60%が”うつ”を患っていたと考えられており、そのうちの70〜80%は心療内科などに治療をうけていなかったのです。

 

では、どういう時期に自殺を考えるのか?というと・・・
とても状態の悪い時は、自殺すらしようという気になりません。危ないのはよくなりかけてきた時です。このタイミングでは、主治医はもとより、ご家族や職場の人たちは注意しておく必要があります。回復期はようやく、つらかった状態を抜け出して、徐々に回復しつつある時期です。しかしなかなか身体がついてこなかったり、逆に身体は元気になってきたのに、気持ちがついてこなかったりと焦りや戸惑いが大きいです。こういう気持ちから自殺に及ぶケースが考えられます。

 

また「死」に関する言葉を口にしたり、自殺を想起させるような行動が見られたら、注意が必要です。「思い出の場所に行ってみたい」と言ったり、身の回りの私物の整理を始めるなどです。

内閣府:平成26年中における自殺の状況より作成

3、”うつ”の治療の三本柱とは?

 

・薬物療法

・心理療法

・休養

 

の3つをさします。

 

3-1、薬物療法

薬物療法とは、つまりドクターから出された薬を飲むということです。それも処方された通りにきちんと飲み続けることが重要です。頭痛薬や胃薬と違って、痛みがなくなったら飲むのをやめるのではなく、症状がなくなっても「もう飲まなくてもいいですよ」と言われるまで飲み続けることです。

 

 

なぜならSSRI、SNRI等を代表とする昨今の”うつ”の治療薬は、脳内ホルモンのバランスを整えるものだからです。

 

脳内ホルモン(セロトニンやノルアドレナリン)を調整するのが、薬の役割です。”うつ”は特に幸福のホルモンと言われるセロトニンの量が少なくなることで、気分が不安定になったり、睡眠の質が低下することが問題視されています。

 

薬も多くの種類があり、古くから使われている三環系、四環系と言われる薬から、比較的新しいとされるSSRI、SNRI、NaSSA等様々です。じゃあ新しいものがいいのか?といえば、合う合わないということがありますからドクターに相談しながら試していくといいでしょう。この時も合わない(副作用が強く出る)からと言って勝手にやめてしまわないことです。薬が合わないようなら、相談して他のものに変えてもらうこともできるはずです。

 

また、私がおすすめしているのは、薬の処方だけでなく、ホリスティックな側面からもケアしていくことを重視しています。ドクターもいろんな先生がいらっしゃるので、薬重視の先生から、薬とその他のケア(アロマやヨガ、その他のセラピー)を取り入れている先生もおいでです。

 

私どもよく相談させていただいているドクター(村上医師)は(弊社HPにも掲載されています)、ホリスティックなケアを重視される先生でいろんな側面からケアされる先生です。

 

3-2、休養

とにかくしっかり休むことです。身体を休ませることはもちろん、気持ちのうえでもしっかり休むことです。仕事のこと、人間関係のことなどを気にせずに、ゆったりとした気持ちになれるような環境を整えることが大切です。

 

そういう意味でも、仕事をされている方は、軽度であれば2,3ヶ月の休職は効果的だと考えます。家事をされている方もなるべく負担にならない範囲で休むようにしてみてください。

 

起き上がって、無理なくすごせるようになれば、気分転換で散歩や近くに買い物などでかけるのもいいでしょう。
この時期は、「早く復帰しなくちゃ」と焦ることなく、ゆっくりと自宅で休養してください。

 

できることなら、一人暮らしの方は実家や家族と一緒にすごせるような環境にしてあげてください。一人よりは、食事のことや身の回りのことを気にせず整えてもらえるような環境で、ストレスなく過ごすことが理想です。

 

 

3-3、心理療法

”うつ”の要因は遺伝的なものから、環境的なもの、もともとの素地というものもあるでしょう。つまり”うつ”になりやすい性格傾向というものがあります。それは「真面目」「責任感が強い」「完璧主義」な人です。もちろんそうだからといって、全ての人がそうだという話ではありませんが、このタイプの人は自分に厳しい人が多いかなというのが印象です。

 

「真面目」「責任感が強い」「完璧主義」な人は、仕事においても、人柄が反映されていることでしょう。よって仕事ぶりも会社としては、評価される人材だと言えるかもしれません。本人も自分の目ざす仕事ができている時には、満足し自信をもてることでしょう。

 

しかし、完璧主義で、責任感が強いからこそ、失敗した時、思い通りにいかない時に、ダメージを受けてしまいます。ましてや日頃から睡眠不足や、食事もきちんと摂れていないような状態が続けば、きっかけによってメンタルヘルス不調にまっしぐらということも少なくありません。

 

そうなれば、先に述べたとおり、集中力の低下や判断ができなくなることで、仕事はますます思い通りにならず、自分のことを責めたり、「自分ってだめだ・・・」「自分は会社にいても価値がない、役に立ててない」という状態を強化してしまうことになります。

 

だからこその「心理療法」です。本当に仕事ができない自分は「だめ」なのでしょう?「価値がない」のでしょうか?このあたりの考えや価値観を見直し、自分にとって本当に幸せになれることはどういうことなのか?を見直すのが「心理療法」です。(少々乱暴な言い方ですが…)

 

このタイミングで自分を見直すということは、変な言い方かもしれませんがある意味「チャンス=好機」だと言えます。なぜならメンタルヘルス不調にでもならなければ、自分のことを見直そうなどとは思わなかったかもしれないからです。

 

逆を言えば、自分を見直すことをしなければ、また職場に戻っても再発する可能性があります。

 

ぶっちゃけ薬と休養である程度よくなることが多いです。軽度の”うつ”で休んでいたなら、2、3ヶ月で復職できるはずです。けれどまた忙しい職場に戻ったとしても、考えや価値観が変わらないままだと、再発を繰り返すリスクは当然大きいことでしょう。そういう観点からも、一度しっかりと自分を見つめ直す心理療法は効果的だと考えます。

 

 

4、まとめ

いかがでしたでしょうか?”うつ”についての、基本的な理解は得ていただけましたか?いざ自分が”うつ”になった時や、家族や職場の同僚、部下など、周囲の人たちが困った時の手助けや理解にもつながることと思います。

 

”うつ”の症状は、人によっては身体的症状しか見られないというケースもあります。胃腸の不快感や頭痛がする、その他にも口が渇く、眠れない、動悸がする、めまい、耳鳴り、ほてり等です。よく見ていくと心理的な症状があったりするのですが、身体的症状に目がいってしまい気づかないケースです。

 

”うつ”かも気づかなければ、対処療法のみに偏ってしまうことや、他の体の病気と混同してしまうこともあるようです。更年期障害や鉄欠乏性貧血、低血糖症、疲労症候群等さまざまです。対処療法の薬は飲んでいてもいつまでたっても改善されないというケースは少なくありません。

 

そういう意味からも、自分のなかで”うつ”の知識をもつことは、何か不調があった際の選択肢の一つとしてとらえることもできます。

 

他の身体的な病気と違うのは、ある程度すすんだ”うつ”だと、ただ寝ていても良くはなりません。しかるべき治療を行うことが大切ですから「いつもと違うな」と気づいた時には、社内の産業医や近くのクリニックの医師に相談することをおすすめします。

 

悩みは決して一人で抱えないでくださいね。

 

代表 森川 祐子

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