スランプに陥った時のメンタルトレーニング活用方法
最高の組織力を引き出す!
メンタルトレーナーの森川祐子です。
初めて会う人に「メンタルトレーナーです」と名乗ると、たいていの人は「メンタルトレーナーって聞いたことがあるけれど、よくわかりません」という反応がほとんど。
説明の時に「ほら、ラグビーの五郎丸選手のポーズをご存知ですか?」と例のポーズをしてみると、「ああ、それなら見たことあります」「そう言えばメンタルトレーナーがついてるって」「スポーツってメンタル大事ですよね」と。
そう!「スポーツってメンタル大事」なんです。ただそう理解していても、いざメンタルトレーニングを取り入れてみようと思うのは、優先順位から考えて随分あとです。
では、スポーツで結果を出す時にメンタルトレーニングはなぜ必要なのか?スランプの原因と脱却法についてお伝えしていきます。
1、スポーツが上達する最大の理由
さまざまな競技がありますが、スポーツを始めて上達するために大切なことはなんでしょう?
最初はゲームを楽しめるようになる程度に、基本の動きができるようになる、ルールを覚えることですね。当たり前のことですが、ここができないことには始まりません。
そして上達するために何よりも大切なこと。
それは心から「楽しい!」と思えることではないでしょうか。
スポーツって見ているよりやってみると楽しい!ということがわかると、どんどんのめり込んでいきますね。これがスポーツをやって上達する最大の理由だと考えます。
私は男子体操競技選手のメンタルトレーニングを4年ほど行っていましたが、彼らのほとんどは幼少期から体操をはじめています。きっかけは親や兄弟が体操をやっていた。なかには親が体育館を持っている、体操教室を運営しているというツワモノも。もの心つく頃から体操が身近にあるような環境の人が多いです。
そしてトップクラスまで上りつめてくる選手は、子ども時代に「やればどんどん結果が出た」「○○大会で優勝した!」「海外まで遠征した」など、うまくいった手応えをもっている子たちです。
もちろん結果を出す子たちは、才能だけでうまくいっているわけでなく、週6日、学校が終わったら毎日体育館に通い、土日もたいがい練習や試合です。端から見たら、なんて大変だと思うかもしれませんが、本人たちは大変以上に、得ているものがあります。
それこそが達成感や手応えといった、遊びでは手に入れられないもの。だからこそこそ続いているのでしょう。
ではジュニアの練習は子どもが毎日通いたくなるほど楽しいのか?というと、決してそうではりません。ジュニアの練習は非常に過酷です。競技的にも気の緩みが大事故にもつながるためコーチは非常に厳しく、時には子どもたちが泣きながら練習することも珍しくありません。
それでもです。週6日の練習を継続できるのは「やれば結果が出る」ことを彼らは身をもって知っているからなのでしょう。結果が出ることで達成感や手応えはもちろん、親が喜んでくれる、コーチがほめてくれる、他の選手の羨望の的になれる、そして将来オリンピック選手になる!といった夢があるからでしょうね。
過酷な練習 < 達成感 → 面白い!
この図式にはまると、スキル、メンタル力ともに伸びていきます。もちろん、スパルタ方式でやって結果を出す方法もありますが、いずれはやり方をシフトしていかないとうまくいかなくなります。
2、スランプを経験してからが本当の勝負!
スポーツは練習量を増やすことで、うまくなります。ただ、もともとの素質、機能的な面も大いに影響するところです。
フィジカル面では、体格、体力、柔軟性、瞬発力、持続力、筋力等々、加えて論理的な思考力、感情のコントロールなどメンタル面での要素が足され、さらに高い精度が求められるようになります。スポーツサイエンスと言われる所以(ゆえん)ですね。
ではアスリートがスランプに陥る原因はどのような理由からなのでしょう?
2-1、アスリートがスランプに陥る理由その1
「あなたの目標はなんですか?」とたずねると、多くの選手は「オリンピックで金メダル」「世界大会出場!」「○○チームに入ること」等何かしらめざすものを持っています。目標を高くもつことは素晴らしいことですね。
しかしながら目標が高すぎるために、今自分がやっている練習で、本当に結果につながるのだろうかと疑問をもつ。これがスランプの第一歩です。もちろん、この疑問が改善につながる場合が多いのでしょうが、うまく改善につながらず結果が出なくなるのがスランプですから、負のスパイラルにはまると、いつまで経ってもゴールに辿り着かないような気持ちになっていきます。
やってもやっても前進しているように思えない時、手応えを感じられない時というのは、モチベーションが低下し、同時に練習量が減る、もしくは練習の質が低下します。恐らくこのような状態で練習をやっても成果は出ません。
ではどうすればいいのでしょう?
それは高い目標=最終ゴールの手前に、サブゴールを設定してやることです。少し頑張ればクリアできるような目標設定がいいです。自信をもてない人ほど、細かなサブゴールを多く設定してやるのです。一見すれば「大したことがない」と思うようなものでも、日々続けてやることで「ポジティブな気持ち」が貯金されていきます。
というのも、自分に厳しいアスリートほど、日々ダメ出しをしています。「今日はこの技が決まらなかった」「まだまだ技術不足だ」「もっと○◯できるようにならなくては・・・」などです。これが続くと気づかないうちにボディブローが効いてくる感じで、同時に気持ちも落ちていきます。だからこそ、気持ちをプラスの状態にもっていってやるためには、日頃からポジティブな気持ちになる習慣づけが大切なのです。
2-2、アスリートがスランプに陥る理由その2
目標が明確で、モチベーションも高く、ちゃんと練習をしているのに成果がでない時というのはどうでしょう?
ある一定の年齢までは決められた練習内容をこなしていけば、結果は出るでしょう。ところが年齢を重ねていくと当然、得意と不得意、身体面における器質的な特徴や機能的な部分(故障等)での差が出てきます。だとすれば、自分だけに合うやり方を見つけていかなければなりません。
そして練習内容を決める前提として・・・
今、出来ることをやる練習ではなく、何をやれば目標に到達できるのか?ということ。
頭ではわかっていても、それを練習内容にまで落とし込めていないことが多いです。なぜなら練習にも、好きな練習と嫌いな練習があるからです。モチベーションが下がり気味の時など、嫌いな練習しないですよね。”全く練習をしない”という選択はないけど、とにかく何かやっておけば、練習やった気になるので、手を出しやすい練習をするのです。
それで「練習やっているのに、上手くいかないんですよね」と言うわけです・・・
そこで本来は「いや、それでは成果にはつながらないよね」と誰かが指摘してあげないといけません。意外とそこまで見てくれる指導者は少ないものです。
では、どうしたらいいのでしょう?
それは自分に合った練習法を見つけるために、自分と向き合うこと”です。
スランプのタイミングで自分と向き合うことは、楽しいことではありません。むしろ嫌なことと直面しなければなりませんから、落ち込んだり、モヤモヤしたり、不愉快な気持ちになることでしょう。
それでも強くなりたければ、覚悟を決めてやることです。
すぐ改善できることは、案外簡単だったりします。
・持久力がないから体力をつける→そのため毎日10km走り込みをする
わかりやすいですね。決めて、やればいいだけです。
端から見れば簡単なことと思うかもしれませんが、本人は走るのが苦手だから、ずっと避けてきたということが多いです。これを継続しようと思ったら、覚悟がないと続きません。
少し時間はかかるけれど、さらに深く自分と向き合うというのはどういうことでしょう?
過去にこういう選手がいました。
体操の選手で以前はバク転や側転、宙返り、問題なく出来ていました。ところがちょっとした失敗をきっかけにバク転が出来なくなってしまったのです。となればなぜ出来なくなったのか?を見ていかなければなりませんね。
若い頃というのは、勢いでいろいろな技が出来ていたりするものです。ところが何かのきっかけで過去の恐怖が引き出されてしまって、できなくなるということがあります。
少々時間がかりますが、生育歴を振り返り見ていきます。すぐに「あの出来事が・・・」と過去のひっかかりを思い出す人もいれば、記憶に蓋(ふた)をしていて、なかなか出てこない人もいます。
振り返りを進めると、思い出したくない記憶が思い返され、苦しさや恥ずかしさ、後悔・・・。内面的なことですから、今まで人に話したことがないというものまで引き出されてくることも。
一見つらいことのように感じられますが、実はここにこそメリットがあります。過去の感情を引き出してきて、もう一度味わうことで、タフなメンタル作りに役立っているのです。
精神的に未熟だった過去の自分。あの時の自分には受け止めきれなかったわけですが、現在の自分であれば、理解できる、思いやれる、許せる、気遣える・・・など今だからこそ受け止められることがあります。今の自分が過去の自分のことを意識に上げることで、長い間の心のひっかかりを解消できるのです。
3、まとめ
いかがでしたでしょうか?スポーツは目的によって、メンタルのありようは全く違うものになります。
楽しむという目的でやっている人、健康のため、職業として、日の丸を背負ってやっている人、競技を通してもっとその先を見据えている人・・・
どんな目的であったとしても、スポーツを通して得られるものは、素晴らしいものがたくさんあります。
だからこそ、失敗や挫折、苦しかったという思いだけでやめてしまうのは本当に残念です。それこそ競技選手、プロと言われる人たちは、常にそういうものとの戦いのなかで成果を求められるもの。だからこそ、闇雲にとりくむのではなく、うまく自分のメンタルと付き合っていって欲しいと考えます。
メンタルトレーニングは、基本的なステップはあれど、組み立てるプログラム、内容は人それぞれ。自分と向き合うということは過程においては苦しいかもしれませんが、その先にあるものは、視界の開けた今までとは違う世界です。
ぜひあきらめず、納得のいくところまでやりきってください。必ずその先には次につながる未来が開けます。
代表 森川祐子
メンタルヘルスに関することを気軽に聞いてみたい!
・メンタルヘルスケアの問題にどこから手をつけたらいいかわからない!
・メンタルヘルス不調者に対する管理職者の対応について、研修やコンサルタント等について聞いてみたい。
と感じたら、まずはお問い合わせください。