ストレスチェック制度の現状とこれからの予測
最高の組織力を引き出す!
メンタルトレーナーの森川祐子です。
ストレスチェック実施より約1年と8ヶ月。ご存知のとおり一事業場あたり50人以上いる職場では、ストレスチェック義務化により、少なくとも一度は実施されたことになります。しかしながら現状、まだ実施をしていない企業もちらほら・・・
タイムリーに厚生労働省よりストレス制度の実施状況(概要)の発表がありました。
厚生労働省の「ストレスチェック制度の実施状況を施行後はじめて公表します」(平成29年7月26日発表)報道資料によると、ストレスチェック制度の実施状況は、
・ ストレスチェック制度の実施義務対象事業場のうち、 82.9%の事業場がストレスチェック制度を実施。
・ ストレスチェック実施事業場の労働者のうち、ストレスチェックを受けた労働者の割合は78.0%。
・ ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師による面接指導を受けた労働者の割合は0.6%。
・ ストレスチェックを実施した事業場のうち、78.3%の事業場が集団分析を実施。
8割以上の事業場で実施されており、また一つの事業場内でも労働者の受験率が8割弱。ここまでは予想どおりですが、驚いたのは、医師の面接指導を受けた人がなんと0.6%!
産業医の先生や社労士さんからのお話しで、少ないとはお聞きしていましたが、ここまでとは驚きです!
目次
1、ストレスチェック制度、実施義務対象事業場のうち82.9%が実施
対象事業場の8割以上が実施ということですから、まずまずといった感じでしょうか。
しかしながら実施割合は事業規模によって異なります。1,000人以上の規模の会社は99.5%ですが、反対に50人〜99人で78.9%と20%近い開きがあります。
2017年7月厚生労働省調べ
要因として考えられるのは、労働者の母数が大きいということは、不調になる人の実数も多いということです。
仮に高ストレス者が10%とすれば、1,000人の会社であれば100人。50人の会社であれば0.5人ですから、規模の小さな会社ほどストレスチェック制度の必要性は実感しづらいのかもしれません。
一方、大きな組織の人事労務担当者にとってメンタルヘルス問題はリアリティがあり、より切実な問題であることがわかります。
では、次に業種別に見てみましょう。
2、ストレスチェック制度!業種別実施状況
全11業種のうち93.2%の金融・広告業をトップに、最下位は67.0%の清掃・と畜に続いて、68.2%接客娯楽業となっていて、その差25%の開きが見られます。
ちなみに離職率の高い業界ベスト5に飲食・宿泊業、教育、小売、医療、生活関連サービス業(美容院、ブライダル、旅行代理店、クリーニング、映画館、パチンコ、清掃等)があります。理由としては絶対的な人材不足、休みが取りづらい、給料が安いなどが挙げられます。その辺りの関連を見ると、以下の表2において接客娯楽、商業あたりは忙しさや定着率の低さからか、ストレスチェック実施率がやや低いのかもしれません。
2017年7月厚生労働省調べ
3、ストレスチェック実施後の産業医の面接状況
では次に、ストレスチェック実施後の産業医の面接状況について以下の表を見てみましょう。
2017年7月厚生労働省調べ
平均で0.6%
1000人の企業でもわずか5人との結果が出ています。
私も以前から、耳にしていましたが、実施率はかなり低いですね。
ストレスチェックは高ストレス者は上位10%の設定とされることが多いのですが、この結果は高ストレスと指摘された方が、何の対処もされないまま放置されているということを意味します。
先日大手企業の人事部長と話をしていたところ「いや〜うちも産業医の面接に進む人が少なくてさ」「人事や上司に知られるのが嫌みたいなんだよね。これだとやった意味がなくなっちゃうよね〜(苦笑)」とのことでした。
おっしゃるとおりですね。ストレスチェックは従業員数も多くなると、その負担も小さなものではありません。
またせっかく従業員の皆様が自らの結果を見て「自分が高ストレス?思った以上にストレスがかかっていたんだな」とわかったとしても、周囲に知られたくないからという理由で、本人任せになってしまっています。会社として対処できないことは非常に残念であり、組織にとってはリスクを放置していることにもつながります。
4、ストレスチェック後の集団分析実施について
そもそもストレスチェックは個別の状況を調べるだけでなく、部署ごとのストレスのかかり具合をみる集団分析を推奨しています(現在は努力義務)
そのため、2割ほどの事業場では、集団分析が行われていなかったということが以下の結果からわかります。これはメンタルヘルス対策的に見て、「とてももったいない」ことです。
2017年7月厚生労働省調べ
なぜなら集団分析実施することによって、部署毎のストレスのかかり具合がわかります。もちろん、あらかじめ予想される部分もあるかもしれませんが、一部の部署のみ突出してストレスが高い場合などは、何かしらの原因があるはずです。
繁忙期、人手不足、心理的負荷の大きな業務内容、作業環境、作業姿勢、人の動線等、想像可能なものから、人間関係トラブル、特にハラスメントなどが起きていると、当該本人のみならず、周囲の人たちにも心理的影響が大きくなることが考えられます。
しかし人間関係トラブルと言った、表にあらわれにくいものも少なくありません。意図的に本人たちが隠してしまうこともあります。
ストレス要因も目に見えるものから、見えづらいものまでを、集団分析を通して、問題点を浮き彫りにしていくことが可能となります。
実際には各部署ごとに働く人たちとリーダーとが忌憚のない意見を出し合い、問題点を見つけ出していくことが必要です。そして見えてきた問題に対して、具体的な改善点を見つけ出し、優先順位をつけて取り組むことです。対人関係のトラブルが見つかった場合は、早急にヒアリングを行うなど対処が必要になります。
場合によっては、はじめは隠れたトラブルがわからないかもしれません。しかしチーム一丸となって職場環境改善に取り組み続けることで、見えてくる課題もあるのではないでしょうか。
以上のような取り組みこそが組織の健康に配慮するということに他なりません。
5、ストレスチェックの今後
さて気になるのはストレスチェックの今後について。
まずは、まだ1回目の実施を行なっていない企業にとっては今後の動向は気になるところです。
知り合いの社労士さんや産業医の先生からお聞きすると、まだ顧問先でもストレスチェックを実施していない会社もあるそうです。今のところ初年度ということもあり、様子を見ているといった印象を受けます。
しかしながら、国の意向としては集団分析の活用を含め、より生きた制度としていくための動きが見られます。また一度実施した企業にとってはより効果性を出すために、マニュアルを作成するなどノウハウが蓄積されていきます。
ストレスチェック制度にかかわらず、メンタルヘルス対策を推し進める流れにあるなかで、企業として従業員の健康に対してはより積極的に働きかけていくことを求められることでしょう。
と言うことは、単にストレスチェックの実施だけでなく、従業員の健康問題については、個々の企業において今からできる範囲で取り組みを進めることが大切だと考えます。
代表 森川 祐子
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