職場での同僚間のいじめもパワハラになるのですか?

パワハラ対策に関して、企業では関心が高まりつつあります。

特にこの2、3年でパワハラへの対策を施行している会社が増えてきたように感じます。

 

弊社で担当させていただいて5年目になる企業様では
パワハラやメンタルヘルスに関して研修を実施しており
徐々にこれらの考え方が浸透してきたと、人事部の方からもお声をいただきました。

 

それだけに継続が重要だと感じるこの頃です。

 

パワハラに関して言えば、上司が部下へのかかわりにおいて
言動に気をつけなければならないということが、どの会社でも周知されてきています。

 

管理者の方々には従業員への安全配慮義務もありますから
自らの言動のみならず、従業員同士のかかわりや仕事量・質の問題
本人の健康状態にも気を配る必要がありますね。

 

最近では、ちょっとした言動に対しても「パワハラにならないか」と
心配される上長も少なくありません。
本来指導すべき内容を差し控えてしまっては本末転倒です。

 

さてタイトルにもあるように
同僚間でも「いじめ」はパワハラになるのか?について考えましょう。

 

1、「パワーハラスメント」とはどういう行為をさすのか?

そもそもパワハラはどのような行為をさすのでしょうか?

 

厚労省ではパワハラを以下のように定めています。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為
厚生労働省サイトより https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126546.html

 

この定義、要点がよくまとまっています。
特に注目すべきポイントは2つ!
それは”相手との関係性””行為内容”についてです。

 

(1)相手との関係性について

 

*職務上の地位の違い
→上司と部下等。地位の違いがあることで明らかに力の差があります。

 

*人間関係などの優位性の違い
→同じ地位の人。同僚・同期といった立場が同じでも、複数の人間が集まれば
発言権の強い人、お願い事をされたら断りづらい人等
力関係には差があるもの。

 

職場の人間関係というものは、微妙な関係性のうえに成り立っています。
・雇用形態(正社員、契約社員、パート、アルバイト等)の違い
・長く勤めている(年齢は下でも、長く勤めている人が先輩になりますね)
・専門的な知識がある(社内のシステムのことを熟知している等)

 

つまり役職や働き方など何かしら「違い」があるというところに
パワーバランスの差が生じて、関係性に起因していることがわかります。

 

(2)行為内容について

 

厚労省で定めた6つの行為類型が基本的な考え方となります。
しかしながら、これら6つがすべての行為を網羅したものではないことを留意しておきましょう。

 

①身体的な攻撃暴行・傷害
②精神的な攻撃脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
③人間関係からの切り離し隔離・仲間外し・無視
④過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
⑤過小な要求業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
⑥個の侵害私的なことに過度に立ち入ること

厚生労働省サイトより https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126546.html

 

以上6類型を踏まえた上で、重要なことは「業務の適正な範囲を超えて」いるかどうかがです。
つまり、業務上必要な指示や注意・指導が行われている場合には該当せしません。

 

業務上必要な注意や指導とは

・自らの欠点を自覚させ、長所にも気づかせる
・成果が出るようにフォローしたり、状況改善を促すようなかかわり
・叱責や指導の必要性を明確にし、業務の目的を伝える

ということを具体的に伝えていくことです。

 

しかしながら、熱心になるあまり行き過ぎた注意や指導は
業務上必要な注意や指導の範疇を超えると捉えられてしまいます。

 

また最近では、部下目線で自分の気に入らない上司や
指導に対して「それってパワハラですよね」と牽制するような言動も見られます。

 

適切な注意・指導をしていても、相手が「パワハラ」と言えばパワハラになるとしたら
管理者の立場にある人は、指導を控えてしまいます。
それは本来求めることではありませんね。

 

そこで「業務の適正な範囲を超えて」という一文が活きてきます。

 


業務の適正な範囲を超えたらだめだけど、
本来その人がなすべき仕事を遂行もらうこと自体は、パワハラにならないということ。

 

「めんどうください」「こんな仕事やってられないよ!」と言って、不快感を露わにしたとしても
「あなたの仕事、ちゃんと遂行してくださいね」と伝え方に問題がなければ
パワハラにはならないということです。

 

*指導の仕方として、大きな声で威嚇したり、暴言を吐いたりすることがあってはなりません。
いくら業務上、その人がなすべき仕事であり、適切な指導内容だとしても、伝え方に問題があると
パワハラとなる場合があります。

 

2、職場内での同僚間の「いじめ」もパワハラになるの?

 

「同僚間の「いじめ」はパワハラになるのか?」

ここまで読み進めていただいてわかるように
同僚間(先輩・後輩、同期同士)での「いじめ」「いじり」はパワハラになる可能性があります。

 

一見すると立場に差がない間柄ですが、
「いじめ」や「いじり」は業務上必要なことではなく、
継続就業が難しくなるような行為にあたることを行えば
同僚間でもパワハラになり得るということです。

 

現場での声を聞いてみると、これは私の感触ですが
同僚間の「いじめ」は意図的であり
同僚間の「いじり」はおふざけの延長にあるもの。

 

意図的であるということは、気に入らない原因が在ることが多いですが
「ふざけて」の場合、
行為者はパワハラになるという認識なく行っているように思われます。

 

意図的な「いじめ」は部外者からは見えづらいものが多いですが
「いじり」のようなパワハラの認識なく行っている行為は、
正しいパワハラの知識をもつことで防いでいくことができるものです。

 

そういう視点から同じ理解をもつ重要性がわかりますね。
ぜひ職場内での共通認識を統一していくことを、おすすめします。

 

心理カウンセラー
森川 祐子

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