メンタルヘルス対策!ストレスチェックや研修を行うだけで十分なのでしょうか?

高の組織力を引き出す!
ンタルトレーナーの森川祐子です。

 

昨日、今度ハラスメント研修を行う企業で打ち合わせでした。

 

企業によって、研修に対して求めるニーズは様々です。
受講者の層(年齢のみならず、業務形態、男女比)や就業規則の整備、相談窓口設置の有無等、これらをお聞きするとある程度、組織の姿勢がわかります。

 

メンタルヘルス問題に取り組む際に、多くの組織はまずはストレスチェックをやらなくちゃ!それだけでは足りないから、とりあえず研修でもやっておけばいいかな。

 

これだと正直、なかなか従業員への健康への意識づけが定着せず、研修をやって終わり!になりかねません。

 

そのためには、きちんといざという時の受け入れ体制を整えておくことが必要です。
ここでは、最低限整えておきたいルールをまとめておきます。

 

1、産業医・衛生委員会を設置する

 

一つは産業医について。

 

50名以上の事業場には産業医の設置が義務付けられています。
月1回以上の職場巡視や健康診断の事後措置(結果によって面談指導をする等)を行います。

 

メインのお仕事は「従業員が健康で、仕事を継続できるかどうかを見極めること」です。

*詳しくは「メンタルヘルス問題における産業医のかかわりと契約のメリット」をチェックしてみてください。

 

 

もう一つは、衛生委員会。

 

これも50名以上の事業場に、産業医と衛生管理者の選任とともに、設置が義務付けられています。

そして衛生委員会では以下の内容について話し合う事を示しています。

一  衛生に関する規程の作成に関すること。
二 法第二十八条の二第一項又は第五十七条の三第一項及び第二項の危険性又は有害性等の調査及びそ
  の結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
三 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る。)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
四  衛生教育の実施計画の作成に関すること。
五 法第五十七条の四第一項及び第五十七条の五第一項の規定により行われる有害性の調査並びにその
    結果に対する対策の樹立に関すること。
六 法第六十五条第一項又は第五項の規定により行われる作業環境測定の結果及びその結果の評価に基
    づく対策の樹立に関すること。
七  定期に行われる健康診断、法第六十六条第四項の規定による指示を受けて行われる臨時の健康診断
    及び法に基づく他の省令の規定に基づいて行われる医師の診断、診察又は処置の結果並びにその結果
    に対する対策の樹立に関すること。
八  労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
九  長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
十  労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
十一  厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書
    により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。

中央労働防止災害HPより抜粋

 

はっきりいって、とてもわかりづらいです。
自分で載せておいて言うのもなんですが…

 

要は衛生に関する事健康を守り、病気を予防することを話し合い、
具体的な決め事をしていく!というものです。

 

ただそれが衛生委員会のメンバーの負担になっては元も子もありません。目的はあくまで労働環境改善のための委員会であるべきなのです。現実を経営陣に伝えて改善につなげるというのが大きな目的です。

 

 

衛生委員会のメンバーは誰がよいか?

 

目的は働く環境について、会社側(経営陣)に現状を知ってもらい改善提言していく事ですから、管理職が多数では機能しません。

 

まずは委員会なので、議長が必要です。議長は事業場の責任者(本社であれば人事部長、視点であれば支店長等)がいいでしょう。そして部署がいろいろあるようでしたら、偏りのないよう選んでもらうといいでしょう。
「衛生に関して経験を有する者」と言われますが、経験のある人ばかりではありませんので、衛生(健康問題)に興味がある人がいいかもしれません。

 

基本的に衛生委員になっても見返りがあるわけではないです。そこでちょっとした特典(お弁当がつくとか、お茶とお菓子が出る程度)があるといいかもしれません。忙しい業務をぬって出席し、従業員の人たちの安全衛生について調べたり、審議・提案をするのですから、それくらいはありですよね。

 

そして、産業医にも構成メンバーになってもらいます。ただ毎月の衛生委員会への同席は難しいでしょうから、最低年に4回程度は出席を要請するということを軸に考えてもらえば、忙しい時期を避けることができます。

 

2、定期健診を受けること

 

企業で働いていると年に1回程度健康診断を受けましょう!という案内が来ますね。

私もかつて勤めていた企業では、会社近くにある提携クリニックに、社員が時間をずらして受けに行っていました。会社によっては健診用の大型バスがやって来たり、最近は人間ドッグまで受診できるような大型医療施設で、期間内に受診して来てください、という形になっていたりします。

 

 

 

人間ドッグなどになれば、一人4〜5万円。これを会社が負担してくれるわけですから、従業員にとってはありがたいことですね。実は定期健診は働く人のメリット以上に、会社にとっては受けない従業員がいることで大きなリスクが生じます。

 

会社が怖いのは、労災認定されて、企業側の責任を問われることです。多い疾患としては、脳血管疾患、心臓疾患、次いでうつ病です。特に脳血管・心臓疾患は高血圧や高血糖、高脂血症の状況から、病気の進行を把握することができ、何らかの対処をするためにも、毎年欠かさず(職種によっては1年に2度)チェックすることが重要です。

 

脳血管・心臓疾患は、ストレスからくるとも考えられており、放置すれば死に至る病気です。それが過重労働が原因であるとなっては大変ですから、診断後は病状によって、産業医の面談・指導が必須となるわけです。

 

つまりは健康診断の結果は(人間ドッグの項目を除いて)、法定項目に関しては会社に提出することになっています。これは会社が従業員の健康状態を把握していなければ安全な企業活動はできないからだと考えています。

 

ではもし、異常ありとなったらどうなるか?

 

「異常あり」の程度にもよりますが、有識者(保健師や産業医)から指導や場合によっては就労判定をしてもらわなければなりません。業種・業態によって、健診の結果から判定される内容は変わってきます。

 

1、現状のまま就労してよい

2、条件付きで就労してよい

3、即休職

 

一番の迷いどころは、2「条件付きでの就労」です。「条件」となる内容を詳しく設定しておく必要がありますね。

 

3、過重労働者の対応について

 

大前提として、従業員として働く人たちには労働時間が法律で制限されています。
休憩時間を除いて、1日8時間まで、1週間40時間までです。

 

「え〜!うちの会社のあの残業は何なんだ!」と思う人もいるかもしれませんが、この問題は労使協定(通称サブロク協定)を結べば、上限を超えて残業を命じることも可能となります。

 

なぜ過重労働が、メンタルヘルス問題と関係があるのか?

 

例えば18時終業の会社で3時間残業したとして、通勤に1.5時間かかる人だと帰宅は22:30。
それから食事やお風呂、一息ついていたら1:00近くになってしまいそうですね。翌日は6時起床で7時に家を出て、9時始業。だとしたら睡眠時間は5時間です。

 

5時間睡眠が平日5日間続けば、土日の休日は寝て過ごしていても不思議ではありません。

 

睡眠不足は、血糖値や血圧が高まり、ホルモン値の異常や認知能力記憶力低下がわかっています。仕事の効率は下がり、体調不良リスクも高まります。

 

このような状況でも、不調になる人、ならない人と様々です。それは年齢のことや業務内容、人間関係などにも依ります。しかしいずれにせよこの状況で、脳血管・心臓疾患、うつになれば、労災認定が高まる可能性があり、一度認定されれば「安全配慮義務違反」が問われ、本人や遺族から賠償請求される可能性が高いということも認識しておきましょう。

 

3、まとめ

 

労災リスクという観点から言えば、”労災認定”のハードルは年々下がり、企業リスクが増大してきたと言えるでしょう。特に2012年をさかいに、精神疾患による労災認定の基準が改定されたことも大きく影響されています。そのことからもストレスチェックやメンタルヘルス研修をしたから十分ではないことはおわかりいただけたことと思います。

 

私どもはあくまでメンタルヘルス研修や外部資源としてのカウンセラーの駐在、社内メンター制度導入などのメンタルケアを中心としたサポートを行っていますから、自分の専門外のことを伝えてもしようがないのか?というと決してそういうことではありません。

 

たしかに今回の記事にあげた社内規定に関することは、社労士さん等の範疇だと言えます。
それでも働く現場の人たちのメンタルヘルス問題に携わる以上、背景や導入についての経緯を理解し、時には全体像を見据えた上での提案が必要だと考えます。

 

まずは御社における労災リスクという観点で見た時に、制度や規則(ルール)面で整備されているか等を整理されて見るとよいもしれません。必要であれば専門家をご紹介させていただくことも可能です。お気軽にお問い合わせください。

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