メンタルヘルス研修と言うけれど、うちの会社にぴったりな研修内容とは?
最高の組織力を引き出す!
メンタルトレーナーの森川 祐子です。
これまで、メンタルヘルス研修をどういう会社に頼めばいいのか?や規模や階層に合わせたメンタルヘルス研修の内容についてお伝えしてきました。
そして今日は、具体的なコンテンツ(カリキュラム)の選び方についてです。
「そんなことは専門家が、カリキュラムを組んでくれたらいいんじゃないの!」と思われるかもしれません。
もちろん、そうあるべきです。しかしその判断基準を持っていれば、よりリクエストを伝えられたり、より御社に合った内容を検討していくことができます。もっと言えばせっかく予算をかけてやったのに、何の効果も得られなかった…となりかねません。
ということで、詳しい内容をみていきましょう。
1、メンタルヘルス研修導入の目的は何か?
あたりまえですが、何のためにメンタルヘルス研修を導入するのか?という目的を明確にすることから始まります。
例えば、すでにメンタルヘルス不調者が出ている職場なのか、現時点ではそのような人はいないけれど、今から予防のため、ということでも違いますね。
またメンタルヘルス問題の火種となりそうなのはどの階層で、不調者が出そうな年代(役職)はどのあたりなのか?
これも、会社によって全く違います。例えば、40代50代で叩き上げの人たちが多い会社では、注意しないとハラスメント行為による、メンタルヘルス問題というリスクがあるかもしれません。
一方で、社員の階層(もしくは年代)はどの階層(年代)が厚く、ケアを必要としているのはどの階層(年代)なのか?ということ。もっと言えば、それらのことを人事・労務担当者や経営者が理解しているのか?ということです。
2、メンタルヘルス研修の受講者は誰か?
目的が明確になると、次は対象者が明確になりますね。
階層別に分けると以下のようになります。
・新人
・20代〜30代前半の若手社員(役職なし、主任、係長)
・30代リーダー候補社員(主任、係長、課長補佐)
・30代後半〜40代(中間管理職)
・40代〜50代(上級管理職)
・経営者
図式化してものが以下になります。
これが一般的な階層別の研修プログラムになります。一つ目安として捉えていただければと思います。
3、メンタルヘルス研修の目的に合わせたコンテンツ
3-1、メンタルヘルス研修が初めてor導入してみたがよくわからなかった
ストレスチェックはスタートしたものの、メンタルヘルス研修はよくわからなくてまだ行なったことがない。やった方がいいのはわかるが、何から始めていいかわからない、という会社でしたら、規模にもよりますが、従業員数が多くても少なくても、管理職者層(小規模であれば経営層)に向けたメンタルヘルス(ラインケア)研修がいいでしょう。
メンタルヘルス・ラインケア研修とは部下のいる管理監督者(部長や課長)が職場環境改善の一環として取り組むことをさします。いかに部下のために働きやすい環境をつくるか?これは物理的(仕事の環境、スペース、作業場、動線等)なことを含みますが、特にメンタルヘルスに特化したものをさします。
カリキュラム組みとしては
3-1-1、昨今のメンタルヘルスの現状とストレスチェックについて
→特にストレスチェックについては、正しく理解していただかないと、実施しても意味のないものになります。
ストレスチェックの正しい理解について詳しくは「ストレスチェックは本音で答えていいの?メンンタルヘルス不調だとわかったら不利?」の記事をお読みください。
3-1-2、メンタルヘルス研修におけるラインケアとは
→ここでは、管理監督者の役割と意図をお伝えしています。一つお伝えすると、なぜ管理監督者は部下のメンタルヘルスにまで気を使わなければならないのでしょうか。ひと昔まえであれば、当然のことながらこれらのことは「自己管理」だったわけですね。
その理由は「安全配慮義務」にあります。
そもそも会社には、従業員が安全・健康に働くことができるように配慮する義務があります。この義務を安全配慮義務といいます。また、会社が、その義務を果たさない(怠る)ことを安全配慮義務違反といいます。そしてこの義務を負うべきは、会社=使用者ということになるのですが、同時に部下への権限を委譲されている管理職にも同様の責任が課されています。
つまり部下の仕事の管理と同様に、健康にも配慮しなければなりませんよ!というものです。「健康」には身体的・精神的なもの両方を含みます。
精神的なものは、”うつ”に代表とされるようなメンタルヘルス不全にならないように予防することはもちろん、身体的なものというのも、過重労働は長期にわたると、私生活にも影響がでます。
睡眠不足、運動不足、栄養の偏り、ストレスの増加等による家族への影響です。結果的に身体疾患として代表的なものは脳・心臓疾患などです。健康診断の検査結果で要注意!と出ている人は、それなりの配慮(残業をさせない、業務量を減らす等)をする必要があります。
3-1-3、メンタルヘルス研修におけるストレスマネジメント
メンタルヘルス研修では、精神的なものの負担を軽減させることが目的ですが、同時に身体的な負担にもつながるストレスをコントロールすることを行います。
つまり、
ストレスの仕組み:なぜストレスが起こるのか?
ストレスへの対処法:どうやってストレスを解消するのか?
研修でお伝えしているストレスのお話を一つご紹介します。例えば心というものを、やわらかいボールだと例えてみてください。指でボールを押し付けてみたらボールは歪みますね。
このように歪んだ状態というのが、ストレスがかかった状態をあらわします。押し付けている指がなくなれば、歪みはなくなり元の状態に戻れます。心も同様で、ストレスがなくなれば、もとの健康な心の状態に戻れるというものです。
このような感じで、誰にでもわかりやすく、理解していただけるよう講義をすすめます。セルフケア研修でも同様に、ストレスマネジメントを組み入れています。
3-1-4、「いつもと違う部下」に気づいた時、管理職者が行うべきかかわり
管理職者に求められることは「いつもと様子が違う」部下に気づいた時に、どう対処するか?ということが求められます。これまでメンタルヘルス問題を抱えた組織やチームで、うまく対処ができなかった理由の一つに、「部下の様子が変だと気づいていたけれど、どうしていいかわからず放置してしまっていた」ということが挙げられます。
なかには全く異変には気付かれず、気づいた時には職場に来られなくなっていたというケースもありますが、ほとんどは「変だな」ということに気づいていたというのです。対処法がわからないばかりに放置してしまったという残念な結果が挙げられています。
だからこそ
「いつもと違う」様子に気づくポイントはどこなのか?
「いつもと違う」様子に共通する症状とは?
「いつもと違う」様子に気づいたら、どのような声かけが必要か?
そしていざ、休職となった場合に、確認しておくべきこと・伝えておくべきことは何なのか?等を研修で行なっていきます。知ってさえいたら、また知っていて前もって書類を整えておけば、あとは決められた通りに対処をすればいいのです。
管理職という立場で怖いことは、あとあと問題になって責任問題を問われた時に「何とかしなくちゃ」と思ってはいても、何を具体的にすればいいかがわからなかった。このような事態は避けねばなりません。
研修実施にかけられる時間的な制約もあるでしょうが、以上の4点を研修に盛り込みます。
3-2、メンタルヘルス研修は管理職向けは終わっているので、従業員にメンタルヘルスの基礎を知っていてほしい!
一通り、管理職研修(ラインケア)までは行なったけれど、従業員(部下)向けにはまだ行なったことがない、という時には、次の段階としてメンタルヘルス(セルフケア)研修がいいでしょう。
カリキュラム組みとして
1、「昨今のメンタルヘルスの現状とストレスチェックについて」は、前項で述べた通りです。これは導入として知っておいていただきたい部分です。そのうえで2「メンタルヘルスにおけるストレスとは」ということもレクチャーしておきます。
「ストレス」とはどういう仕組みで現れ、どのように対処すればいいか?ということは基本中の基本だからです。逆をいえば、仕組みを理解していれば、セルフケアでうまくストレスを解消できる人も増えていくことでしょう。
加えて行うべきカリキュラムは以下のとおりです。
3-2-1、メンタルヘルスにおける自己認知&他者認知
ちょっと堅苦しい表現をしましたが、つまりは「自分を知ること」&「他人に関心をもつこと」を表します。会社というところで働いていれば、一人で仕事は完結しません。必ず周囲の人たちと協働してこそ、成果を出すことができます。
そのためには「自分のことを客観的に知る」ことは外せません。私たちは必ず自分という色眼鏡を通してしか物事を見ることができません。何かしらの価値観や考え、思いに彩られているわけです。どのような偏り(悪い意味ではなく)傾向があるかを知っておくことで、物事の捉え方も客観的に見れるものです。
それがわからないと、自分の思い込んでいることが全てだと思ってしまい、時に苦しくなってしまうものです。
例えば、こんな感じ。
「仕事とは常に完璧であることを追求し、上司から高く評価してもらえるように努めるべきだ!」と考える人がいたとしましょう。自分の調子がよく、完璧に仕事ができ、評価を受けられている時は、自分に対しても自信が持てることでしょう。
しかし、何か失敗したり、トラブルになった時に、思うような仕事ができない、上司の評価が下がることが起きたらどうでしょう?そのようなことが起きれば、自分のことを受け入れられなくなったり、自信を失ったり、最悪の場合「この仕事は自分には向いてない」と言って辞めてしまうかもしれません。
このようなケース、研修に行くと、現場の担当者からよく耳にします。
基本的に、どのような考えや価値観を持っていてもいいわけです。けれどそれが時として自分を苦しめるものになっていたり、一緒に働く人の尊厳を傷つけるようなものだとしたら、それはいかがなものでしょう?その考えを場合によっては、手放したり、変えてもいいわけですね。
こういうことを心理療法では行います。もちろん研修で心理療法ができるわけではありませんが、その入り口として「自分を知る」そして「他人を知って、関心をもつ」その意義や重要性をお伝えしていくわけです。
3-2-2、メンタルヘルス不調(うつ)が起きる要因と対処法について
次に、メンタルヘルス不調、特に働く人に最も多いとされる”うつ”についての予備知識を得ていただきます。このあたりはご要望に応じて、ラインケアでもカリキュラムに入れています。
実は”うつ”という病気になる原因は明確なものについてわかっていません。遺伝的な要素や、環境的要素、性格傾向など様々なものが重なり合って発症します。
そういう意味でも、自分のことを知ることは性格傾向を理解するという点でも都合がいいですね。
”うつ”も今は従来型/新型とありますから、それぞれの症状を詳しく解説。また治療はどのように進んでいくのかや、投薬(薬物療法)も具体的な薬効果や副作用等希望がれば、詳しく解説していきます。これら病気のことを知っておくメリットは、そのサインが見えた時に、すぐさま対処できるという点です。
”うつ”の症状は、やもすると、他の病気や症状と混同しがちです。だからこそ、自分や家族、周囲の人たちの様子が「何かおかしい」と思った時に、不調要因の候補の一つとして”うつ”が入ってくることで早々に対処できるようになります。
そういう意味からも、メンタルヘルス不調について伝えていきます。そのほか、希望があれば、適応障害やパニック障害、PTSD、統合失調症を加えて解説することも可能です。
3-2-3、具体的なストレス解消法&適切な生活習慣について
ストレスマネジメントは仕組みを理解しただけでは、いざ大きなストレスを抱えた時にどう対処していいかわからないものです。大事なことは、ストレス解消法を知り、正しい生活習慣に戻していくことです。
ストレス解消法はすでに、多くの方が自分に合ったやり方で実行しているものもあるかと思います。ポイントとしてはその方法が自分の身体や心に負荷になっていないかどうかです。
例えばストレス解消として、「喫煙」「飲酒」「どか食い」「周囲の人に当たり散らす」等はどうでしょう?「喫煙」「飲酒」「どか食い」はほどほどであればいいでしょうが、行き過ぎると身体に悪いです。「周囲の人に当たり散らす」等もいい迷惑ですね。
周囲の人たちと「どんなストレス解消法がある?」と意見交換してみるのも面白いかもしれません。
そしてもう一つ「適切な生活習慣」についてです。メンタルヘルスに良い生活習慣とは、「十分な睡眠」「バランスの良い食事」「適度な運動」です。忙しくなると途端にできなくなったり、時間がとれなかったりするものです。
私は分子整合栄養医学というものを学んだのも、実は食事(栄養)がメンタルヘルスに大きな影響を与えているということを知ったからです。今では栄養療法を用いて”うつ”の治療を行なっているクリニックもあるくらいです。
このあたりも非常に重要ですので、カリキュラムには取り入れるようにしています。(これ一つのカリキュラムだけでも2時間の研修ができるくらい重要なのです!)
4、まとめ
いかがでしたでしょうか。メンタルヘルス研修は様々なプログラムを組み合わせて作ることが可能です。大事なことはこちらができるプログラムをたくさん並べ立てることではなく、御社の状況から鑑みて必要となるカリキュラムは何かを判断しコンテンツを作っていくことです。
きちんとそれができれば、年次に応じて、内容を更新し、会社にぴったり合う研修を提供することができるようになります。このたり、専門の研修会社でないと、何となく既存のプログラムを組んで実施しているところが多いのも実情です。
せっかく実施するのであれば、最大限の効果を狙った研修でなければ「とりあえずメンタルヘルス研修をやった」だけに終わってしまいます。今の会社のあり方、これからの組織づくりにも活かしていただける内容となっております。
現状より気になることがあれば、お気軽にご相談くださいませ。
代表 森川祐子