【業界別】金融業界におけるパワハラ対策とは
ハラスメント対策に取り組む時、「自社でもやらなければならない」とわかっていても
二の足を踏んでしまうのは、どこから手をつけてよいかわからないということではないでしょうか。
厚生労働省のハラスメントに関するサイトを開いてみたところで、やるべきことがたくさんありすぎて迷ってしまいます。
もちろん取り組むべきことは大筋では決まっていますが、業界によって、求められること(会社が従業員に求めること)は大きく異なります。
そこで業界別傾向のあるあるから、ハラスメント対策をお伝えしていきます。
第一回目、銀行や信金、保険等金融業界から。
1、金融業界の体質
金融業界が提供するサービスとしては、経済の根幹をなすインフラの役目があります。経済を牽引する立場にあるため、莫大なお金が動く場所であり、その正当性については監督官庁や金融庁のガイドラインにのっとって厳しい監視のもと、日々の業務が行われているのでしょう。
厳しい管理下にある職場で働く人たちの人事はどのようになっているのでしょうか。
当然のことながらお金を扱う業界だけに、数字は事細かに管理されています。金融の人事は基本的には「人は基本的にミスを犯すもの」という「性悪説」に基づいて行われいると言われています。
「悪」というのは、悪人であるというよりは、「人間は弱いものだ」ということ。
つまりは人的ミスや不正を予防するために、万全なシステムを構築し、そのため人事評価においても加点主義ではなく、減点主義に基づくものだとされています。
求める人材像としては金融業界に従事する者としての「求める人材像」をあらかじめ定義しておき、あるべき姿に不足が生じる際、評価を差し引いていくというものなのです。
業務の内容としては定型化されていることが多いため、具体的な指標を定めておけば、評価する際にも明確でわかりやすいですね。しかしながら定型化の仕事というものは慣れてしまえば、楽なのでしょうが、プラスアルファの評価を受けにくい側面もあるため、チャレンジして評価を得る機会は少ないのかもしれません。
そうすれば、業務はミスなく、こなす、やり過ごすものとなる傾向に。もしかしたらそれは人間関係にも言えることなのかもしれません。
身近に困った人がいる、パワハラがある、といった時でも、事なかれ主義となり見過ごされやすいわけです。業界的に上司からの多少の厳しい言動はしかたない。だって数字が足りてないあいつが悪いのだからという傾向が見られます。
ハラスメント研修を実施した際にも「職場でのパワハラ行為はありますか?」の問いに、『金融業界の体質として、仕方ない部分もあるんじゃないかな』という声も聞かれたほどです。
すでに問題になっているケースもあります。
2、ハラスメント対策としての方向性
銀行や証券、保険会社等、大手であればあるほど、ハラスメントに対する対策はずいぶんと前から取り組みが見られます。研修や相談窓口に関しても、随分前から実施している傾向が。そのためか職場でハラスメントが横行して困るという職場は少ないようにも。
一方、中小規模の企業になるとこれからというところもあるようです。
「ハラスメント対策」がどれくらい進んでいるかを確認の上、研修などを実施していきます。
これまでの研修が誰を対象としたもので、内容や頻度はどうだったのか?
研修後の理解度や、現場でのハラスメントの有無、相談窓口の活用状況を確認します。
業界的に見ると「多岐にわたるストレスが多い職場」だと考えます。「数字上のストレス」「人間関係の固定化」「ことなかれ主義」ましてやAI化が進んでいる現状では、今後定型化の仕事は人の手が不要になりますから、従業員にとっては将来的なビジョンが描きづらい業界だとも言えそうです。
ハラスメントは高いプレッシャーのある職場で起きやすいということも挙げられますので、メンタルヘルス不調者の有無なども確認したうえで、対策を進めていくことが肝要です。
3、具体的なハラスメント対策
具体的なハラスメント対策導入としては、現状把握を行なった上で、すでにある実績を勘案した上で、職場での問題を見ていきます。
ハラスメント問題は、人間関係にまつわるトラブルから発展していることがほとんど。そういう意味では、国が決めた施策の一環として型通りのものを取り入れるのではなく、具体的に起きている問題に対処していく視点が重要です。
しかし、職場における人事労務担当者や管理者が職場の状況(人間関係や業務トラブル等)を全て把握しているわけではありませんから、その場合は状況把握から実施していきます。ここではハラスメント対策として求められる5つのポイントをお伝えしておきます。
①トップのメッセージの周知
いくら人事労務担当者が、ハラスメント対策をやります!と言ったところで、トップや役員、上級管理者が動かないとなれば、リーダーや一般従業員は動きません。トップがハラスメントをなくす!ことを明言し姿勢を表明することで、対策は功を奏するのです。
②ハラスメント実態調査
経営者や人事担当者にヒアリングをすると「弊社に限ってハラスメントはそんなにないですよ」といった答えが返ってくることがあります。実際にもハラスメントが起きていないということがありますが、「実は・・・」ということも少なくありません。
事業規模や、ハラスメント状況(現状把握の段階で)を踏まえたうえで、アンケート形式や特定部署に限って面談を行う等、決めていきます。
③教育研修
誰を対象としたどのような研修が効果的かはさまざまです。ハラスメントの現状、経営者や役員のハラスメントに対する姿勢、男女比等によっても変わってきます。
現状についてを十分に検討したうえで、対象となる階層、扱うテーマを検討していきます。
④相談窓口の設置
社内相談窓口を設置している会社がほとんどですが、その場合は身内となるため、相談をためらう人も少なくないようです。「こんなことを言ったら評価が下がるのではないか」「相手の耳に入ったらどうしよう」等、不利益を受けるかもしれないという不安が多く挙げられます。
そのためにも社内相談窓口とあわせて、社外相談窓口設置が有効です。
利害関係のない相手だからこそ、自由に話しやすいというメリットがあります。その際には話した内容が漏洩されないこと。不利益を受けないこと。無料で受けられる等、あらかじめ考えられる不安を解消するよう明示しておくことも重要です。
⑤ハラスメント問題への対処
これはすでに現場でトラブルが起こっている場合。問題意識が低い職場(ハラスメント行為が横行していて、あたりまえになっている)と気づきづらいことがあります。
しかし放置していては、被害者個人の問題ではすまなくなることも。早急な対処が求められるでしょう。
4、まとめ
金融業界的に見れば、取り組みは進んでおり、ハラスメントへの意識はあるものの、ハラスメント問題を職場全体の視点で見ると、職場全体として解決していこうとする意識は低いように思います。(もちろん職場によって一括りにはできないとしても)
そのためハラスメントへの理解のみならず、いかに自分ごととして取り組めるよう組織として従業員全体を巻き込んでいくための対策が必要ではないでしょうか。